7月2日の深夜1時35分から発生した通信障害が完全普及したのは、5日15時36分。
復旧まで86時間、三日半ほどかかっている。
これはauだけではなく、同じ回線を使用しているUQモバイルや楽天モバイル、povoでもデータ通信や音声通話ができない状況になった。
さらに、気温を観測するアメダスや貨物列車の運行など暮らしに関わる部分にも大きな影響が出ている。
去年、2021年10月に、NTTdocomoでも大規模な通信障害が発生したが、その時で普及までに最大29時間、1,290万人に影響が出ていた。
さらに前の2018年には、ソフトバンクでも4時間半の通信障害で、3,060万人に影響が出ている。
今回は、それを遙かに上回る規模での通信障害で、最大3,915万人に影響が及んだ。
110番や119番などの緊急発信もできない状況で、今では数が少なくなった公衆電話に駆け込んだという人も多い。
今回の通信障害は、音声通話処理に関する部分で「輻輳(ふくそう)」が発生したことが原因とされている。
輻輳(ふくそう)とは?
輻輳(ふくそう)というのは、物が1か所に集中し混雑することだ。
通信業界においては、音声通話やデータ通信のトラフィックが特定の箇所に集中する状態を指す。
そのため、障害発生時には、必ずと言っていいほど出てくる単語になる。
もう少し分かりやすく、コンビニやデパートなどのお店で考えてみよう。
1つのお店に、大勢の人が来店する。
そうなると当然のことながら店舗の人口密度が上がって、店内での人の移動が困難になり、レジでの会計では長蛇の列ができるだろう。
日常生活においては、混雑しているお店を避けて来店を控えることになるだろうが、通信においては違う。
いくら混雑していようが、ドンドンとアクセスが集まってくる。
店内に人が増えると必然的に商品もなくなる。
そのため、商品の補充が必要だ。
入荷した商品を店内に運び入れるにしても、何の商品が、いくつ入ってきたのか確認しなければならない。
それらの確認が終わって商品を陳列するにしても、店内は大勢の来店客で移動するのも困難。
商品を陳列するのにも時間がかかってしまう。
いつもなら大勢の来店があっても問題なく業務を行えるが、今回はメンテナンスのためにレジを入替えていた。
レジを入替えた時に、入荷した商品の確認に時間がかかってしまったため、慌てて元のレジに戻したものの、商品データの確認に更に手間取ってしまうことになってしまった。
レジでの会計待ち、商品の搬送、商品の入荷チェックと、それぞれの連携に時間がかかってしまい、来店者数に追いつかなくなってしまったということだ。
輻輳(ふくそう)というのが、どういうものなのかイメージできただろうか?
今回お話したレジは、音声通話処理に関わる交換機になる。
この交換機を新しいものと取り替えたものの、音声通話が一部で不通になったため、元の交換機へ戻したが、その間に4Gのネットワークで音声通話をするVoLTE交換機へアクセスが集中して、輻輳(ふくそう)状態に陥って、スマートフォンなどの端末の位置を登録している、モバイル通信の要となる加入者データベースからの応答に答えられなくなった。
連鎖的に障害の規模が大きくなってしまったのだ。
輻輳(ふくそう)は、いつ発生するのか?
輻輳(ふくそう)は、いろいろなタイミングで起こる。
一番分かりやすいのは、年末年始だろう。
多くの人が「あけおめ」「ことよろ」などの連絡を取り合うため輻輳(ふくそう)状態に陥って、通信速度が低下する。
また、大規模災害などの災害発生時は、多くの人が被災地に連絡を取ろうとするため、特定の地域に音声通話が集中して、輻輳(ふくそう)状態に陥って電話がつながりにくい状況になってしまう。
大規模なイベントなどで、特定の場所に多くの人が集まると予想される場合には、輻輳(ふくそう)状態に陥らないように、あらかじめ移動基地局を現地に派遣したりして、輻輳(ふくそう)の発生を防ぐ場合もある。
そして、この輻輳(ふくそう)からの復旧は一斉に進むわけではなく、順々に処理が進められるため、どの程度の期間で全ての人が復旧するのかを見通すのが難しい。
ただ、これには優先順位を付けられるので、今回は台風の状況を鑑みて西日本側を優先するようにしたため、東日本と西日本で復旧のタイムラグがあったのだろう。
今後は4Gから5Gへ主力のネットワークが変化して、自動運転車やスマートシティなどの広まりで利用用途が拡大するだろう。
今回の大規模な障害で、色々な課題も見えてきている。
輻輳(ふくそう)を発生させない、もしくは輻輳(ふくそう)から障害にならないように、通信業界の技術者は、まだまだ頭を抱えていることになりそうだ。
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今回の内容は、2022年7月7日にポッドキャストで配信されている。
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